こんにちは。ツシマです。
今回は、初級編に引き続き、看護職のAI活用事例を紹介していきます。
前回は個人レベルでAIを使う方法を紹介しましたが、今回は海外の看護職が組織でAIを活用した例を紹介します。
つまり、今回の話の方が規模が大きいです。
「AI?まだ職場で導入するのは怖いな…」と思っている看護職の皆さん、今から説明する事例を参考に、AIを取り入れる勇気を手に入れませんか??
それでは、海外の看護職がAIをどのように活用したか、ご覧いただきましょう…
CASE1:AIが文書作成を効率化し、外科の看護師の負担を減らした(アメリカ)
アメリカの「シダーズ・サイナイ病院」という三次救急の病院の話です。
こちらの病院では、Aiva Nurse AssistantというAIアプリで業務効率化を図りました。
このアプリは、看護師を助ける機能がたくさんあります。
リアルタイムでの記録、検査結果や退院指示などの通知、痛みの評価や体位交換のリマインダー、看護師同士の引き継ぎ、栄養課との連携などがこのアプリでできます。
Siriみたいに「今日の私の受け持ち患者は誰?」と聞いたら患者リストを見せてくれますし、「○○さんの血圧は○/○で、脈拍は○○でした。」と言ったら自動で記録してくれます。看護師は記録されたデータを最終チェックした後、正式に記録することができます。
しかも、「○○さんの最後の採血結果を教えて」と言ったらリストで出してくれます。
Nursing documentation and its relationship with perceived nursing workload: a mixed-methods study among community nursesという論文によると、アメリカの看護師は勤務時間の25%〜41%を文書作成に費やしているようです。
このアプリを使えば、この文書作成の時間を減らせるのです。
そんなアプリをシダーズ・サイナイ病院の外科部門で導入しました。
すると、看護師からは圧倒的に好評でした。
「え〜ちょっとそんなの取り入れるの乗り気やないんやけど」という看護師達もいたようですが(アメリカにもそんな人いるんだな…)、今では大幅に文書を作る時間が短縮され、ストレスも減り意見を改めた人もいるようです。
日本でもこんなアプリ出ないかな…
CASE2:ロボットが看護師の仕事を助けた(アメリカ)
こちらもシダーズ・サイナイ病院の話です。
シダーズ・サイナイ病院では、Moxiという臨床補助ロボットが導入されました。
Moxiは検査サンプルの運搬や薬局からの薬の受け取りなどの作業をして、看護師を助けてくれます。
私自身大学病院の看護助手としてバイトをしていたことがありますが、当時の仕事と似ています。
看護師は携帯電話でMoxiに電話またはメッセージを送り、助けを求められます。ロボットが看護師からのリクエストを受信すると、5分以内に状況の更新と到着予定時刻を返信してくれます。
そして、Moxiは医療スタッフの歩行距離を大幅に減らしてくれました。
ロボットが患者に直接関わることについてはまだ難しい部分がありますが、「看護助手のように働いてもらう」のであれば安心してお任せできそうですね。
CASE3:看護師が患者にメッセージを送るのを、AIが助けた(アメリカ)
今度はUWヘルス・ユニバーシティ病院での事例です。
日本ではアメリカほど一般的ではありませんが、アメリカでは一部の病院で患者とテキストメッセージでやり取りをすることがあるようです。
看護師が多くの時間を患者との電話、メッセージへの返信に費やしている状況に対応するべく、UWヘルス・ユニバーシティ病院はAIに補助してもらうことにしました。
そのAIは、患者からのメッセージを踏まえ、AIが自動で回答の下書きを作ってくれます。
なんて便利な機能なんだ。
ただし、現場の看護師はAIの下書きを鵜呑みにしません。
AIが生成した回答の下書きを読む前に、まず患者のメッセージを読み、カルテを読むようにしているようです。AIが作った下書きを完全に破棄することもあります。
また、AIが生成した回答を適切に評価するための知識を看護師達が持てるように、経験豊富な看護師のみがこのツールを使えるようにした部署もあるようです。
「経験豊富な看護師ばかりAIが使えてずるい!」という気持ちもありますが、確かに看護師の知識の質を保つためにも、AIに思考を任せすぎないことが必要ですね。
CASE4:AIが褥瘡の悪化予防に役立った(イギリス)
今度はイギリスのコミュニティナース(ここでは、日本でいう訪問看護師に近い)の事例です。
コミュニティナースの業務量の約50%が、急性創傷および褥瘡の管理を占めていました。
褥瘡の大きさを測るのも手作業でした。
そこで、North East North Cumbria (NENC) Integrated Care Boardは、AIを使って褥瘡ケアの質を高めようとしました。
まず、臨床医がスマートフォンで創傷評価を行います。その後AIが創傷を自動的に測定し、組織の状態も判断してくれます。
また、創傷の記録を残すためにもこのAIは役に立ちました。
これにより、コミュニティナースの業務の負担だけではなく、患者の治癒時間の短縮、感染予防に役立ちました。
傷の写真を残すことで、小さな変化を確認することができるようになり、患者の健康と回復に役立てられるようになりました。
このAIならコストを抑えやすいかも(私の感想です)
CASE5:AIが敗血症のリスクを予測した(アメリカ)
デューク大学病院(Duke University Hospital)の救急科では、患者のリアルタイムのデータをスキャンし、機械学習モデルを用いて敗血症を予測するモデルを使いました。
その結果、臨床症状悪化の12時間以内に予測し、警告できるようになりました。
それにより、看護師は敗血症のリスクが高い患者への対応を早められました。
なお、同じくアメリカのコロンビア大学病院アービングメディカルセンターでも、似た機械学習システムが導入されたようです。
急変は怖いですが、少しでも早めに対応できるに越したことはないですね。過去のデータから推測された警告ではありますが、AIが看護師の力になってくれるのであれば看護師と患者の大きな味方になるに違いありません。
また、別の事例ではありますが、feelbetter社は、ポリファーマシー(多剤併用)の警告をしてくれるAIを導入しました。
やはりリスクを教えてくれるAIは、医療スタッフ不足の現代には必要になりそうですね。
CASE6:新米ママの味方!チャットボット・Rosieが産後ケアを助ける(カナダ)
チャットボットRosieとは、母親がパソコンやスマートフォンに妊娠や乳幼児の健康などについて質問すると、信頼できる情報源から情報を提供してくれるAIです。
看護職には直接関係がなさそうですが、母親が信頼できるAIがあると、そのサービスを母親(特に新米ママ)に紹介しやすくなります。
看護職に聞くレベルではない質問であっても、母親は気軽にAIに聞くことができます。
残念ながらRosieは英語・スペイン語しか対応していないですが、日本でもこんなAIができたら心強いですね。
参考:https://formative.jmir.org/2024/1/e51361/
まとめ
このように、既に海外ではAIを使った看護職の業務効率化がなされています。
特にアメリカが進んでいますね。
日本でも社会医療法人石川記念会 HITO病院にて、AIで転倒・転落のリスクを判定してインシデント事例を減らしたという事例があります。
海外の良い事例は取り入れて、日本の医療スタッフの負担を減らすと看護師不足にある程度対応できると思います。
そのためには…まず看護職みんなでAIと友達になりませんか?
参考:https://kango-award.jp/nurse-cms/wp-content/uploads/2023/03/4.pdf
