おはこんハロチャオ。ツシマです。今回は久々の統計記事です!
突然ですが皆さん、自分が選んだ統計手法について、「別の方法の方がいいんじゃない?」と、予想外の方向から質問されたことはありませんか?
私はあります。
あるとき、部署ごとに3段階の回答を比較するため、カイ二乗検定を行いました。
イメージとしては、こんなデータです。
| 部署\ストレスレベル | 良好 | 中程度 | 不良 |
|---|---|---|---|
| A部署 | 20人 | 11人 | 10人 |
| B部署 | 15人 | 10人 | 13人 |
| C部署 | 10人 | 12人 | 12人 |
すると、とある保健師さんから、
「部署ごとの比較だと、カイ二乗検定を使ってはいけないんじゃない? このケースだと、ロジスティック回帰分析の方が良いのでは?」
と質問されました。
ツシマ「…………」
突然の質問で、私はポケモン金銀のシロガネ山にいるレッド並みに無口になりました。(ポケモンを知っている人にしか伝わらない)
その場ではうまく説明できず、後からいろいろ調べ直すことにしました。
果たして、部署ごとの分析にカイ二乗検定を使うのは間違いなのでしょうか?
私はその真相を知るべく、アマゾンの奥地へ向かったのでした……。
読者の皆さんのことも置いてけぼりにしません。一緒にアマゾンの奥地までご案内します!!
それでは、レッツゴーー!!!
うるせぇな、さっさと結論から言えやという方向け
結論からお伝えすると、部署ごとの回答の割合を比較したいなら、今回のケースでカイ二乗検定を使っても間違いではありません!
ただし、これはデータの前提条件にもよります。
データの条件と調べたいことによって、検定を選ぶことが大切なのです。
復習!カイ二乗検定は何を調べているのか?
カイ二乗検定については、過去の記事でも説明しています。こちらもご参照いただけると嬉しいです。
【過去記事:カイ二乗検定〜因縁の関係の真相を暴け〜】
さて、今回のケースでは、カイ二乗検定が調べるのは、部署によって、「良好・中程度・不良」の割合が違うかです。
もう少し正確にいうと、部署と回答には関連があるのかを調べています。
カイ二乗検定では、実際に集計された人数と、「もし部署と回答に関係がなかったら、このくらいの人数になるだろう」と予想された人数を比べます。
この予想された人数を、期待度数と呼びます。
そして、カイ二乗検定では、
帰無仮説(棄却したい説):「2つの変数は独立である」=2つの変数に違いはない!
対立仮説(立証したい説):「2つの変数は独立ではない」=2つの変数に違いがある!
という仮説に沿って解析します。
期待度数を計算してみよう!
先ほどの表を、合計人数まで含めて見てみます。
| 部署\ストレスレベル | 良好 | 中程度 | 不良 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| A部署 | 20人 | 11人 | 10人 | 41人 |
| B部署 | 15人 | 10人 | 13人 | 38人 |
| C部署 | 10人 | 12人 | 12人 | 34人 |
| 合計 | 45人 | 33人 | 35人 | 113人 |
今回は、A部署の「不良」の期待度数を計算してみましょう。
期待度数は、次の式で求めます。
その部署の合計人数×その回答をした人の合計人数÷全体の人数
A部署は41人、「不良」と回答した人は全体で35人、全体の人数は113人です。
したがって、
41×35÷113≒12.7人
となります。
部署とストレスレベルに関係がなければ、A部署の「不良」は12.7人くらいになると予想されます。
もちろん、人間を0.7人に分割することはできません。
これは実際の人数ではなく、同じ条件で調査を何度も繰り返したとき、平均するとこのくらいになるだろうという計算上の人数です。
一方、実際にA部署で「不良」と回答した人は10人でした。
予想は約12.7人。実際は10人。ちょっとズレていますね。
カイ二乗検定では、このズレをすべてのマスについて計算します。
一つのマスがカイ二乗値に与える大きさは、次の式で求めます。
(実際の人数-期待度数)²÷期待度数
A部署の「不良」なら、
(10-12.7)²÷12.7
≒7.29÷12.7
≒0.57
です。
なぜ途中で2乗するのかというと、プラスのズレとマイナスのズレが打ち消し合わないようにするためです。
また、期待度数で割ることで、もともと予想されていた人数に対して、ズレがどのくらい大きいのかを考慮しています。
たとえば、同じ3人のズレでも、100人と予想されていたのに、実際は103人だった場合と、2人と予想されていたのに、実際は5人だった場合では、後者の方が「予想からだいぶ外れていませんか?」となります。
カイ二乗検定では、この計算を表のすべてのマスについて行い、その値をぜーーんぶ足し合わせます。
全体としてズレが十分に大きければ、部署の違いとストレスレベルは無関係とは考えにくいんじゃない??と判断します。
ちょっと待った!順序尺度なのにカイ二乗検定を使ってよいの?
実は、順序尺度にもカイ二乗検定を使っても構いません。
ただし、カイ二乗検定は、良好→中程度→不良という順番を見ていません。
カイ二乗検定にとっては、
- 良好という箱
- 中程度という箱
- 不良という箱
の3つがあるだけです。
極端な話、中程度→不良→良好と並べ替えても、検定結果は変わりません。
つまり、カイ二乗検定が教えてくれるのは、部署によって3つの回答の分布が違うかまでです。
「A部署よりC部署の方が、悪い側の回答になりやすいよね…」という順序まで利用して調べているわけではありません。
したがって、順序尺度だからカイ二乗検定は使用禁止!という意味ではなく、カイ二乗検定を使うと、順序の情報は利用されないと考えるのが正確です。
カイ二乗検定を使うための条件
今回のような分析では、大前提として次の点を確認します。
- 一人につき所属部署は一つ
- 一人につき回答は一つ
- 同じ人を複数回数えていない
- 各マスの期待度数が極端に小さくない
最初の3つは、まとめると回答者・観測値が独立しているという条件です。
たとえば、次のような場合は独立とはいえません。
- 同じ職員の今年と昨年の回答を両方入れる
- 異動した職員をA部署とB部署の両方に入れる
- 同じ人に複数回回答してもらう
今回のように、A・B・C部署にそれぞれ別の職員が所属し、一人一回答であれば、観測値はおおむね独立していると考えられます。
「独立」って、どの独立?
ここで少々ややこしいことになりましたね。
先ほど2つの意味で「独立」という言葉を出しましたが、どの意味で独立という言葉を使っているのかまとめます。
1.回答者同士が独立している
これは、先ほど説明した検定の前提条件です。
- 同じ人を複数回数えていない
- 部署間で回答者が重複していない
という意味です。
同じ会社に所属する部署同士でも、一人一回答で回答者が重複していなければ問題ありません。
2.部署と回答が独立している
こちらは、カイ二乗検定でこれから調べる内容です。
部署と回答が独立しているとは、部署が違っても、良好・中程度・不良の割合は変わらないという意味です。
つまり、
- 回答者同士は独立している必要がある
- 部署と回答が独立しているかどうかは、これから検定で調べる
ということです。
3.「独立変数」としての部署
ロジスティック回帰分析などでは、部署を「独立変数」と呼ぶ場合もあります。
このときの独立変数は、結果を説明する側に置く変数という意味です。
部署とストレスレベルが無関係という意味ではありません。
最近は「独立変数」ではなく「説明変数」と呼ぶことも多いです。
カイ二乗検定で「各部署に5人以上いれば大丈夫」は違う!
もう一つ注意したいのが、期待度数です。
「各部署に5人以上いるから大丈夫!」
ではありません。
各部署に30人いても、「不良」と答えた人が全体で2人しかいなければ、各部署の不良の期待度数は小さくなります。
一般的には、
- 期待度数が1未満のマスがない
- 期待度数5以上のマスが全体の80%以上ある
といった条件が、カイ二乗分布による近似を使う目安の一つになります。
ただし、これは天から授かった絶対法則ではなく、近似がうまく働くかを判断する目安です。なんでもかんでも絶対ってないんですよ。大抵のことはね。
期待度数が小さいならFisherの正確確率検定
期待度数が小さい場合は、Fisherの正確確率検定が候補になります。
カイ二乗検定は、観測度数と期待度数のズレをカイ二乗分布に当てはめて、確率を近似的に計算します。
一方、Fisherの正確確率検定は、現在のようなクロス集計表が得られる確率を、より直接的に計算します。
簡単にいえば、
- 人数が十分に多い:カイ二乗検定による近似を検討する
- 人数が少なく、期待度数も小さい:正確な確率を計算する方法を検討する
という使い分けです。
Fisherの正確確率検定は2×2表でよく使われますが、統計ソフトによっては、それより大きいクロス集計表にも使用できます。
なお、Fisherの正確確率検定は、カイ二乗検定とはまったく別のことを調べる検定というより、同じくカテゴリー同士の関連を調べるが、確率の計算方法が違う検定と考えると分かりやすいです。
回答の順序を使いたいならKruskal–Wallis検定
「良好・中程度・不良」の順番を利用し、部署によって回答が良い側・悪い側に偏っているかを比較したい場合は、Kruskal–Wallis検定も候補になります。
【過去記事:わがままな3つ以上のグループを比べたい? それ、Kruskal-Wallis検定にお願いしよう。】
たとえば、
- 良好=1
- 中程度=2
- 不良=3
として、すべての人の回答を順番に並べます。
Kruskal–Wallis検定では、元の数字そのものより、データを並べたときの順位を使って、複数のグループを比較します。
簡単にいえば、C部署の回答は、ほかの部署より全体的に悪い側へ寄っているかを調べる方法です。
ただし、3段階しかないデータでは、同じ回答をした人が大量に発生します。
このような同順位が多いデータでも計算はできますが、
- 知りたいのは3カテゴリーの割合の違いなのか?
- 良い側・悪い側への全体的な偏りなのか?
を先に整理する必要があります。
前者ならカイ二乗検定、後者ならKruskal–Wallis検定が、質問に合いやすくなります。
他の要因も考えたいなら順序ロジスティック回帰分析がオススメ!
カイ二乗検定では、基本的に、
- 部署
- 3段階回答
の2つの関連を見ています。
しかし、実際の職場では、部署以外にもさまざまな違いがあります。
たとえば、
- 年齢
- 性別
- 職種
- 勤続年数
- 役職
- 夜勤の有無
などです。
C部署で「不良」という回答が多かったとしても、部署そのものが原因とは限りません。
C部署には夜勤者が多かっただけかもしれません。
そこで候補になるのが、順序ロジスティック回帰分析です。
【過去記事:回帰分析を知ろう(線形回帰・ロジスティック回帰)】
順序ロジスティック回帰分析では、「良好・中程度・不良」という順序を保ったまま、A部署と比べて、C部署では悪い側の回答になりやすいかを調べられます。
さらに、年齢や職種などを同時に分析へ入れれば、それらの違いを考慮したうえで、部署と回答の関連を確認できます。
一般的な順序ロジスティック回帰では、
- 良好と、それより悪い回答を分ける境界
- 良好・中程度と、不良を分ける境界
の両方をまとめて分析します。
ただし、一般的な順序ロジスティック回帰には、
「どこに境界線を引いても、C部署の方が悪い側の回答になりやすいという傾向と、その強さはだいたい同じですよね???」
という比例オッズの仮定があります。
この仮定が大きく崩れている場合は、通常の順序ロジスティック回帰が合わないことがあります。
ロジスティック回帰分析は、カイ二乗検定の上位互換ではありません。
順序や別の要因を利用できる代わりに、確認すべき条件も増える分析方法です。
順序を使わないなら多項ロジスティック回帰分析
3段階の回答を、それぞれ別のカテゴリーとして分析したい場合は、多項ロジスティック回帰分析も候補になります。
たとえば「良好」を基準として、
- 良好ではなく中程度になる可能性
- 良好ではなく不良になる可能性
を別々に分析します。
順序のない回答を扱う場合や、順序ロジスティック回帰の比例オッズの仮定が合わない場合に使われます。
ただし、良好・中程度・不良の順序を利用しないうえ、推定する数も増えます。
その分、順序ロジスティック回帰より多くのデータが必要になりやすい点にも注意が必要です。
カイ二乗検定と組むと強い?残差分析とCramérのV
カイ二乗検定で有意差が出た後に、結局、どの部署のどの回答が、予想から大きく外れていたの?と知りたいこともあると思います。
そこで使われるのが、調整済み標準化残差です。
調整済み標準化残差を確認すると、それぞれのマスについて、
- 実際の人数が期待度数より多かったのか、少なかったのか
- そのズレがどの程度大きかったのか
を確認できます。
つまり、カイ二乗検定で表全体に関連があると分かった後に、どのマスが全体のズレに関係していたのかを詳しく見ていく方法です。
ただし、マスの数が増えるほど、たまたま大きな残差が見つかる可能性も高くなります。
そのため、各マスについて有意かどうかを個別に判断する場合は、多重比較による偶然の有意差が増えないよう、補正も検討する必要があります。
また、部署と回答の関連がどの程度強いかを見るために、CramérのVを示すこともあります。
p値は、部署と回答が無関係では説明しにくいか?を考えるための値です。
一方、CramérのVは、部署と回答の関連は、実際にどのくらい強いのか?を表す指標です。
ただし、残差分析もCramérのVも、カイ二乗検定の代わりとなる検定ではありません。
- カイ二乗検定:表全体に関連があるか?
- 残差分析:どのマスで、実際の人数と期待度数のズレが大きかったか?
- CramérのV:二つの変数の関連がどのくらい強いか?
という役割分担です。
主人公の座を奪い合っているのではなく、同じパーティーの仲間です。バンドだって、ボーカルの他にギターやベース、ドラムがいて成り立ちますよね?
結局、どれを使えば良い?
ここまでいろいろな分析方法が出てきました。もう検定方法の大渋滞です。渋滞するのは首都高だけで十分じゃい。
…それは置いといて、目的別に整理します。
| 知りたいこと | 候補となる方法 |
|---|---|
| 部署によって3段階の回答の割合が違うか? | カイ二乗検定 |
| 部署によって3段階の回答の割合が違うか知りたいけど、期待度数が小さい | Fisherの正確確率検定、モンテカルロ法 |
| 部署によって良い側・悪い側へ偏っているか? | Kruskal–Wallis検定 |
| 順序を利用し、年齢や職種なども考慮したい! | 順序ロジスティック回帰分析 |
| 3カテゴリーを別々に分析したい! | 多項ロジスティック回帰分析 |
| カイ二乗検定の後に、どこが違うか調べたい! | 調整済み標準化残差 |
| 関連の強さも示したい! | CramérのV |
まとめ
部署と3段階の順序尺度を比較する場合、カイ二乗検定を使うこと自体は間違いではありません。
ただし、カイ二乗検定は回答の順序を利用せず、部署によって3カテゴリーの割合が違うかを調べています。
一方、順序ロジスティック回帰分析は、
- どの部署ほど悪い側の回答になりやすいか
- 年齢や職種などを考慮しても関連があるか
を調べたい場合に向いています。
他にも、期待度数が小さい場合のFisherの正確確率検定、順位を利用するKruskal–Wallis検定などがあります。
過去の記事では初心者の方向けにどの検定を選ぶのが適切かフローチャートを書きましたが、厳密に言うと順序尺度には必ずこの検定!と、変数の種類だけで機械的に決めることはできません。
最初に考えなければならないのは、このデータがどんなもので、私は何を知りたいのか?です。
慣れていないうちはフローチャートを見ながらでも良いですが、分析に慣れてきたらどの検定が何をしているのか詳しく知っておくのが理想です。
ロジスティック回帰分析は、カイ二乗検定がレベルアップして進化した姿ではありません。それぞれ別の質問に答える、別の分析方法です。
検定方法の名前に飛びつく前に、まずは日本語で「何を調べたいのか」を書いてみましょう。
それが決まれば、統計手法も選びやすくなります。
これからは、どんなデータがあり、どんなことを知りたいかを整理しながら分析していきましょう。ツシマとのお約束です!!
おまけ:参考資料を紹介するぜーーー!!!
ウェブサイト:
カリフォルニア大学ロサンゼルス校:https://stats.oarc.ucla.edu/sas/output/proc-freq/
ペンシルベニア州立大学:https://online.stat.psu.edu/stat504/Lesson03
書籍:
データ分析に必須の知識・考え方 統計学入門 仮説検定から統計モデリングまで重要トピックを完全網羅
