おはようさん。ツシマです。
突然ですが、先日、私はある疑問が頭をよぎるせいで、夜しか眠れなくなりました。
「産業保健界隈の皆さんは、健康診断結果や面談記録などのデータを普段どこに保存しているの??」
「データの管理で困っていることは何??」
Xを見ていると、「健診機関ごとにデータの形式が違う…」「うちには健康管理システムがないよ…」といった声も見かけました。専用の健康管理システムを使っている企業もあれば、紙やExcelで管理している企業もありそうです。
そこで、産業保健に関わる方を対象に、匿名アンケートを行いました。
今回は15名の方から回答をいただきました。
ご回答くださった方、投稿を拡散してくださった方、本当にありがとうございました!!皆さんの協力なしではこの調査は成立しませんでした!!
注意事項として、これはXを通じて募集した小規模なアンケートです。日本の企業全体を代表する調査ではありません。「こうした職場の例もあるよ〜」という形で、ゆるく読んでいただければと思います。
心の準備はよろしいでしょうか??それでは結果発表します!!
回答者が担当している企業・事業場の規模を教えてください!
- 50~299人:3名
- 300~999人:4名
- 1,000人以上:7名
- 複数の企業・事業場を担当:1名
1,000人以上の企業・事業場の方が約半数です。
今回の結果は、比較的規模の大きい企業・事業場の状況が中心です。
その上で、今回の結果をご参照いただけたらと思います。
データの保存先はどこですか?
健康診断結果、面談・保健指導の記録、休復職・就業上の措置に関する記録、健診後の受診勧奨や対応状況について、どこに保存しているかお尋ねしました。
全体として多く使われていたのは、専用の健康管理システム、紙のファイル・書庫、社内サーバー・共有フォルダでした。
下のヒートマップは、それぞれの項目に回答した人数を示しています。
ただし、複数回答可能な設問であることに留意する必要があります。そのため数字を縦に足しても回答者の人数とは一致しません。

紙が選ばれているからといって、その職場が紙だけで管理しているとは限りません。たとえば、原本は紙で保存し、日常的な確認には健康管理システムを使っているケースもみられます。
そこで、回答者ごとに保存先を組み合わせて見てみました。
保存先は、次の4種類にまとめています。
- 紙のファイル・書庫:紙
- 社内サーバー・共有フォルダ・OneDrive:共有ストレージ
- 専用の健康管理システム:健康管理システム
- 人事・労務システム・健診機関・外部委託先のシステム:その他システム

健康診断結果では、健康管理システムだけで保存している回答と、紙や共有ストレージなどを併用している回答が同程度にみられました。
一方、面談記録や受診勧奨の対応状況は、健康管理システム、共有ストレージ、紙のいずれか一つで管理している回答が中心でした。
休復職・就業上の措置に関する記録では、紙のみの回答が比較的多く、紙が残りやすい可能性がみられました。
休復職では診断書などの外部書類や署名を伴う文書があり、産業保健職、人事、上司など複数の関係者が関わります。
そのため、情報の機密性だけでなく、閲覧権限の違い、書式の不統一、既存システムへの取り込みにくさなどから、紙や共有フォルダが残っている可能性があります。
ただし、今回のアンケートでは紙を使用する理由までは尋ねていないため、明確な理由は分かりません。
データの保存形式を教えてください!
続いて、データの保存形式についてもお尋ねしました。
こちらも複数回答であり、数字は回答した人数を示しています。

全体として多かったのは、健康管理システム等の画面への直接入力、紙媒体、Excelでした。
健康管理システムを利用している職場でも、すべての記録がシステム内だけで完結しているわけではなさそうです。
例として、健康診断結果はCSVやExcelで受け取り、健康管理システムへ取り込むことがあります。面談記録や受診勧奨の履歴は、ExcelやWordで管理している場合もあります。
紙か電子かという二択ではなく、紙、Excel、CSV、Word、システムへの直接入力など、複数の形式が業務の中で使われていました。
今回の結果で注意するべきこととして、保存先と保存形式は別のものである点があります。
例として、CSV形式で受け取った健康診断結果を、健康管理システムへ取り込んで保存することがあります。保存先は健康管理システムですが、業務で使った形式はCSVです。
今回はこの二つを分けて尋ねたことで、「どこに保存しているか?」と「どのような形で記録しているか?」を別々に見ることができました。
健康管理データの保存・管理について、困っていることや、面倒に感じている作業はなんですか?
こちらは自由記述です。9名の方から具体的な困りごとを教えていただきました。
内容はそれぞれ異なっていましたが、読んでいくと、いくつか共通する問題が見えてきました。
システムがあっても、運用方法が統一されていない!
健康管理システムを導入していても、どの情報をシステムへ入力するのか、紙をどこまで残すのかが決まっていないという回答がありました。
産業医や産業保健師など、産業保健スタッフによって考え方が異なるため、健康管理システムを導入した後も紙管理が続いている職場もありました。
また、電子化されたシステムに不信感を持つ医療職がいるため、情報を一元化できないという回答もありました。
システムを導入するだけではなく、誰が入力するのか、何を保存するのか、紙を残すのか、どの記録を正式なものとするのかといった運用ルールを、組織として決める必要がありそうです。
が、その合意形成が難しいですよね…。
保存場所が分かれていて、照合や転記に手間がかかる!
複数の回答で挙げられていたのが、情報が別々の場所に保存されている問題です。
たとえば、健診結果は委託先のサーバー、受診勧奨の履歴はExcel、人事と共有する書類は共有フォルダ、産業保健スタッフ側の記録は健康管理システム、というように情報が分散している例がありました。
その結果、経年の健診結果と過去の受診勧奨をまとめて確認することが難しかったり、共有フォルダに保存された書類を健康管理システムへ改めて取り込んだりする手間が発生していました。
今回の保存先の組み合わせを見ると、健康診断結果では複数の保存先を併用している人が6名いらっしゃいました。
自由記述と合わせて考えると、複数の保存先を使うこと自体が問題なのではなく、それぞれが十分につながっておらず、転記や照合が必要になることが負担なのだと思います。
求められているのは、単に情報へアクセスできることだけではなく、同じ従業員の健診結果や対応履歴を、一貫して確認できることなのかもしれません。
健診機関ごとにデータ形式や項目が違う!
健診機関から受け取るデータについても、困りごとが挙げられていました。
健診機関ごとに項目名や形式が違うため、そのまま利用できず、手入力が必要になることがあるそうです。
「CSVではなくExcelでデータを受け取りたい…」という回答もありました。
これは受け取ったデータがそのまま業務に使える状態になっていないことが負担なのだと思います。
健診機関ごとに異なる項目名をそろえたり、複数のデータを結合したりする作業には、まだ改善の余地がありそうです。
余談ですが、私自身もエンジニアとしてデータの表記揺れを統一する作業をすることがあります。これはエンジニアにとっても頭を悩ませる問題であります…。
紙管理は保管場所と移動の負担が大きい!
紙媒体で健診結果を保存している方からは、保管場所の問題も挙げられました。
過去5年分だけでも大量の書類が必要になり、棚の多くを健診結果が占めているそうです。
また、部署異動のたびに健診結果を異動先へ受け渡す必要があり、手間や紛失のリスクを感じているという回答もありました。
従業員が2,000人を超えているにもかかわらず、紙管理が続いている職場もありました。
健康管理システムの導入を進めようとしても、費用に見合う効果を上司に理解してもらうことが難しいという問題もあるようです。
ここまで悪く言ってしまっていますが、もちろん紙管理にもメリットはあります。
紙媒体には、サイバー攻撃やシステム障害の影響を受けにくく、署名された原本をそのまま保存できる利点があります。特に診断書など、外部から紙で提出される書類は、紙のまま保管する方が簡単な場合もあります。
一方で、紛失や誤廃棄、保管場所の不足、閲覧履歴を残せないといった別のリスクもあります。紙だから安全、電子だから危険という単純な違いではなく、それぞれ異なる管理上の長所と弱点があります。
簡単にいうと、紙はそのまま残すことに強く、電子は後から探す・つなぐ・更新する・集計することに強いです。
どちらの保存方法がその職場に合っているかは、よく検討する必要がありそうです。
前任者からの引き継ぎがなく、正解が分からない!
初めて産業保健師として働いた企業で、前任者から十分な引き継ぎがなく、管理方法を一から考えなければならなかったという方がいました。
健康情報の保存方法には、企業の規模や体制、文化によって違いがあり、絶対的な正解が一つあるわけではありません。
しかし、他の職場がどのように管理しているのか分からない状態では、自分の方法が妥当なのか判断することも難しいと思います。
今回のアンケート結果が、他の職場の状況を知るための一つの参考になればと思います。
おわりに
今回のアンケートを集計する前は、「主に専用の健康管理システムを導入していない企業が、データ管理に困っているのではないか?」と考えていました。
しかし実際には、健康管理システムを導入している職場でも、紙や共有ストレージとの併用が行われていました。
今回の自由記述から見えてきた問題は、単純に「紙だから不便」「健康管理システムがないから不便」というものだけではありませんでした。
情報が複数の場所に分散していること、保存や入力のルールが統一されていないこと、担当者ごとに考え方や管理方法が違うこと、データの転記や照合が必要になること、前任者から十分に引き継がれていないことなど、複数の問題が重なっているようでした。
つまり、健康管理システムを導入するだけで、すべてが解決するわけではなさそうです。
どの情報をどこに保存し、誰が入力し、誰が閲覧できるのか?担当者が変わった時に、どのように引き継ぐのか?システムの導入と一緒に、こうした運用方法を決める必要があります。
エンジニアの視点で今回の結果を見て、私としては、巨大な健康管理システムを新しく作るよりも、既存の仕組みの間をつなぐ小さなツールに広い需要があるのではないかと感じました。
たとえば、健診機関ごとに異なるデータを同じ形式へ変換する、複数のExcelやCSVを社員番号で照合する、健診結果と受診勧奨の履歴をまとめて確認する、転記漏れや二重入力をチェックする、保存先や入力方法をまとめた引き継ぎ用の手順書を作る、といったものです。
ただし、今回の回答だけで「このツールを作れば必ず需要がある」とまでは言えません。
それでも、産業保健の現場でどのような問題が起きているのかを知る、最初の一歩にはなりました。
今回は15名という小規模なアンケートでしたが、想像していた以上に具体的な回答をいただくことができました。
改めて、ご回答くださった皆様、投稿を拡散してくださった皆様、本当にありがとうございました!!!!!
今回の結果が、「他の職場ではどうしているのだろう?」と感じている産業保健職の方にとって、少しでも参考になればうれしいです。
それではまた、お会いしましょう!
